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 たぶん人の量はかなりのもので、さっきから駅を降りても声に声が重なって耳が埋め尽くされる。あと蝉もうるさい。いきなりぶつかられたことがあるから、私にとってはそれがトラウマでどうしても好きになれないのよね。まぁ好きになる必要こそ無いだろうけど。  トキタ君はずっと私の手を引き、歩く速度を合わせてくれる。はじめはイイって言ったのに、半ば強引に。でも白杖なんかよりずっと暖かいし、頼りになる。それにそういう強引さがないと、きっと私は……。 「ヒナ、大丈夫か?」 「へ……っ!? なにが?」 「いや、熱中症とかそーゆーの気をつけないといけないだろ? お前日差しに弱そうだし」 「ちゃんと飲み物のんでるし、そんな弱くないわ。それより凄い人ね、さっきから熱気と声でわかるけど」 「正直予想以上。こんないるんだなって感じだよ。凄いぞ、黒山の人だかりってやつだな。たぶん上から見たらでっかい蛇みたいな列の中にいるぞ俺たち。  ヒナはゆっくりでいいんだよ、だから無理すんな。それより、いいなそれ」 「ありがとう。それって……あぁ、浴衣?」
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