縁日の夜に

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 僕の見ている前で、不思議なことが起こりました……彼女の白く細い首が、徐々に徐々に長く伸び始めたのです。  最初は気のせいかとも思いましたがそうじゃありません。その首はどんどん、どんどんと伸びてゆき、宙でぐにゃりと曲がって方向転換すると、その顔は僕の方へと迫って来ます。 「…………」 「この首を伸ばして捜せば、その子もすぐに見つかるさ」  何がなんだかわけがわからず、ポカンとその光景を眺めていると、迫って来たその〝ろくろ首〟の頭は僕の耳元でそう囁きました。 「ぎゃあああああーっ…!」  またしても絶叫し、僕が逃げ出したのは言うまでもありません。  でも、滅茶苦茶に走っているせいもありますが、なんだか墓地は迷路のようになっていて、いくら走っても外に出ることができません。  さらには涙のせいでますます視界が悪くなり、いつまたおばけに出くわすかもわからないし、僕はなぜ走っているのかさえわからなくなってきました。
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