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「──おい! 起きろ! こんなとこで寝てると風邪ひくぞ!」
次に気がつくと、僕は両親や他の大人達に囲まれ、上から顔を覗かれていました。
どういうわけか? どうやら本堂の脇で眠っているところを捜していた両親に発見されたみたいです。
「……あれ? ユメコちゃんは?」
「ユメコ? いや、おまえしかいなかったぞ?」
夢現に朦朧とした頭で僕が尋ねると、怪訝な顔で父親はそう答えます。
発見時、周囲には僕以外、誰もいなかったようです……辺りを見回してもユメコちゃんの姿はありませんし……あれは、彼女と出会ったとこからして夢だったのか……僕はなおも夢見心地のまま、狐に抓まれたような心持ちで両親に連れられて家路につきました。
さて、その翌日以降も昼間にユメコちゃんと会って遊ぶことはあったのですが──。
「縁日の夜? そんなの知らないよ?」
あの夜のことについて、ユメコちゃんはまるで憶えがないようです。
では、やはりあれは夢だったのか? それともあのユメコちゃんは……。
けっきょく、なんとも釈然としないまま、この年の夏休みは終わりを告げ、僕は村を後にしました。
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