縁日の夜に

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「お、おばけぇぇぇぇ〜っ…! ……ハァ……ハァ……あれ?」  とにかく驚きと恐怖に突き動かされ、後先考えずに無我夢中で走ったため、気づけばユメコちゃんの姿がどこにも見当たりません。どうやらはぐれてしまったみたいです。  おまけに辺りを見回してみても、どこをどう走ったものか? 背の高い墓石が林立していてお寺のある方向すらわかりません。 「困ったな。どうしよう……」  ただでさえ怖い上に〝唐傘おばけ〟にまで遭遇し、その上、こんな所でひとりぼっちにされてしまっては溜まったものではありません。 「ユメコちゃーん! どこにいるのーっ!?」  戻る方向もわからず、恐怖に真っ蒼い顔になりながらも、見通しの悪い夜の墓場で僕はユメコちゃんを捜します。 「……あ! ユメコちゃん!」  そうして彼女の名を呼びながら、墓石の林を独り彷徨っていると、僕はニ、三メートル先に人影を見つけました。 「ユメコちゃ……じゃない!」  しかし、よくよく目を凝らしてみれば、それは彼女ではありません。  上の着物は白いんですが、下は黒いスカートのようなものを穿いています。それに頭には髪の毛がまるでなく、ツルツルの丸坊主です。 「……ああ、そうか。お寺の小僧さんか」  わずかな時間差を置いて、僕はそれに思い至りました。  その格好はどう見ても、〝一休さん〟のような小僧さん(※子どもの僧侶)のものです。となれば、ここのお寺の子弟か修業に預けられている子どもで、ご住職になにか用事を言いつけられて、この裏の墓地に来ているのでしょう。
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