縁日の夜に

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「ちょっと坊や。どうしたの?」 「…うぐっ!」  と、そんな夢中で駆ける僕の帯を掴み、力任せに引き止める者があります。 「ひぃぃぃ…! た、助けてえぇぇ…!」 「ちょいと。何があったか知らないけど落ちつきなって! お墓で走ると危ないよ?」  足を止められ、僕は必死にジタバタ足掻きますが、背後の声はなんだか気風(きっぷ)のよい調子でそんなことを言います。 「…………え?」  そこで、振り返ってみると、それは浴衣を着た大人の女の人でした。  歳は三十前後でしょうか? 日本髪を綺麗に結いあげていますが、今度はちゃんと二つ目があります。見た目はどこからどう見ても完璧に人間です。 「何があったんだい? お姉さんが相談に乗ってあげるよ?」 「おば、おばけが……そ、それにユメコちゃんが……」  さらにはそんな優しい言葉を投げかけられ、僕は涙目になりながら、あったことをすべて話して聞かせました。 「そうだったのかい。それは怖い思いをしたねえ……わかった。あたいがその友達を捜すの手伝ってあげるよ」  どこの誰だか知りませんが、どうやら親切な人らしく、僕の話を聞き終わると女性はそうも言ってくれます。 「あ、ありがとうございます!」  うれしいその言葉に、僕もようやく顔色を明るくするのでしたが。
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