縁日の夜に

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「きゃっ…!」 「うわっ…!」  と、その瞬間、僕は何かにぶつかり、思わず尻餅を搗いてしまいました。 「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい…」  きっとまたおばけなのだろうと、僕は地面に丸まって頭を抱え、ぶるぶる震えながらひたすらに謝ります。 「どうしたの? わたしだよ、わたし。ユメコだよ」 「……え?」  ですが、聞き慣れたその声に顔を上げてみると、そこにいたのはユメコちゃんでした。 「ゆ、ユメコちゃあぁぁぁーん! うわあぁぁぁーん…!」  ようやく再会した馴染みのその顔に、感極まった僕はわんわん泣きながら抱きつきました。 「……ひっく……おばけが、おばけが出たんだ……唐傘おばけに、一つ目小僧に、ろくろ首まで……」 「おばけ? 大丈夫だよ。そんなのもういないから……」  お香のいい匂いのする彼女の身体にしがみつき、嗚咽まじりに訴える僕をユメコちゃんは優しく抱きしめてくれます。  そして、頭を撫でながらしばらくそうして慰めてくれた後……。 「ところで、そのおばけって、もしかしてこんな顔だった?」  抱きつく僕を引き剥がして立たせると、そう言って自分の顔を手のひらでさっと撫でてみせました。  すると、それまでそこにあったユメコちゃんの目と鼻と口はきれいになくなり、後には何もない顔が──〝のっぺらぼう〟が現れたのです。 「ひっ……!」  その顔のない(・・・・)顔を見た瞬間、恐怖の限界を超えた僕はとうとう気を失いました──。
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