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みんな、雨の呪いの子は、もしかしてボクなんじゃないかと思っている? たしかにボクは、自分でも雨男だという自覚がある。そう、いつも思い出は雨の中。だけど1日くらい晴れの日が。晴れの日の思い出? どこかにあったかな?
「ねえ、歩くん。」
「どうした玉男。」
「物心ついたときからボクはこのかた晴れという日を見たことがないんだけれど、それはこの星の気象コントロールシステムがまだ不完全だったから、ずっと雨が降っていたんだと信じていたんだけれど。」
「うん。それで?」
「それはやっぱり思い違いかな。」
「うん。」
「はあ、ちょっと聞いていいかな。」
「うん、いいよ。」
「キミは晴れの日を見たことがある?」
「家ではほとんど晴れているよ。」
「ありがとう。あともうひとついい?」
「うん。」
「花火は見たことがあるかな。でっかいやつ。ボクはね。やっぱり思い出の中に一度も見たことがないんだ。母さんの話ではね。3歳の誕生日の前日にいっしょに見たことあるんだって。ちょうどお盆の時期にやるやつ。ボクは覚えてないんだけどね。」
「ああ。」
「歩くん、どっち?ちゃんと答えて。」
歩くんはそれから黙りこくって、話そうとしなかった。代わりに口を動かしたのは、桂ちゃんだった。
「呪いは、3歳の誕生日から始まるって聞いたことがある。」
「答えになっていないよ。それは。花火、みんなは見たことがあるの。」
「うん、もちろんキミのいないところでね。」
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