都市伝説(2)

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都市伝説(2)

 ……伊勢神トンネル②  立山さんは男子校時代の悪友(?)七人で同乗していて、 いくら有名なスポットとはいえ、 本当に「目撃」するとは思ってもおらず、 車内で冗談を言い合っていたそうです。  「トンネルに入る前に若い男女が居て、 小さい空地で車のチェーンを付けてたんだよ。  それが、夏だよ。 夏にチェーン装着なんておかしいだろ。  でもカップルは普通に作業してたから 事情があるのかと考えて通り過ぎた。  トンネルに入って、 抜けたら直ぐにUターンして前の道へ戻った。  五分も経っていなかったと思う。 跡形もなく男女は居なくなっていた」  「チェーンを付け終わって発ったんじゃないですか」  「夏だよ、何でチェーンが要るのか。 それにチェーンを付けるって大変だろ、 五分やそこらで片付けまで済ませて出発なんて有り得ん。  全員で目撃したから幻でも夢でもない」  そもそも立山さんは色々と不思議体験があるのだそうです。  「前職で電子機器会社に勤めてた時、 廊下を歩いていたら変な力にやられて転倒したことがあった。  他に誰も居ないのに」  「(つまづ)いたんじゃないんですか」  「平坦な廊下だし、それより何より、 強い力で膝をグイッと掴まれたんだから」  「妖怪かまいたちみたいなものですかね」  「かまいたちは知らんけど強い力で転ばされた」  「妙ですね」  「他にも例えばドライヴ中に、 目の前の山の斜面にヘルメットかぶった男が立っていて、 こっちこっちって手を振るんだよ」  「誘導係じゃないんですか」  「足が無いから生きてる人間じゃないと分かる」  「足が無いって?」  「膝から下がすーっと消えかけて足が無い」  「恐くないですか」  「恐くない。急に見るから」  「いつからそういうことを経験するようになったんですか。 そういう能力、大人になるとなくなるって言いますけど」  「いつからかは忘れた。 でも子供の頃は無かったと思う」  立山さんの経験談は話を盛り上げる修辞も何もなく、 淡々としたものでした。  だからこそ、リアル。  私にはただ不思議な話としか言えないことです。  にしても、世界ラリーを豊田市で開催とは、 TOYOTAパワー、あらためて実感されます。  (3)へ続く……          
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