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じゃ、と言って、真船さんは鉄骨の階段に足を踏み出した。しかし、一段降りたところでその長身は止まり、私を振り返った。
「ねぇ葵ちゃん、僕らはリモートでも音楽を届けたいと思うだろう」
「はい?」
「君たちの写真も、似てるんじゃないかな」
胸のあたりに、鈍い痛みが生まれる。
「詞ちゃんもそう、思ってるんじゃないかな」
開きかけた口が、また閉じる。私は頭を下げ、カン、カン、カン、という真船さんの足音が蝉時雨にかき消されて聞こえなくなるまで、サンダルの足にかかる自分の影を見つめていた。
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