甘い話には罠がある

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エレベーターを使うのも何だか癪で、階段を使って一階まで下りたは良いものの、風の早さで迷子になる。 …何処、ここ。 広すぎて全く道が分からない。 渡り廊下通路のとこって言ってたけど、そもそも私が知ってる学校の渡り廊下らしきものはそこら中にある。 そして自販機も、私が思う自販機で良いんだよね?この学校に来てからイレギュラーな事が起こりすぎて、目に見える物があまり信用できない。 「…あの、」 声が聞こえて振り返ったら、 制服を着た女の人が立っていた。 女の人っていっても同い年くらい。さっきの花音がやたら色気むんむんだったから、普通の女子高生に安心する。 「?」 「どうか、しましたか?」 「?」 「何か探してるように見えたので…」 見るからにモジモジとした人付き合いが苦手そうな女の子は、何故か顔を真っ赤にして上目遣いに私を見る。 誰かに普通に話し掛けられたの、小学生以来かも。バイトと勉強で周り見えて無かったし没頭してたから、暫く友達がいた記憶もない。 「渡り廊下の自販機がある場所探してて…」 「それならこっちです!案内しますっ!!」 急に声を張るからビックリする。 ぱぁーっと花が咲いた様な満面の笑みを浮かべ、相変わらず頬を明るめたまま。「こっちです」と私を促してくるから、お言葉に甘えて案内して貰う事にした。 「あまり学校、来ないんですか?」 「? どうして?」 「自販機の場所知らないって…」 彼女の目がネクタイに落ちたのに気付き、慌てて「違う、一年。ネクタイは借り物で…」と誤解を解く。
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