甘い話には罠がある

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「だったら何て呼べば良いんですか…」 つい、溜め息が溢れる。 物凄い時間をロスしてる気がする。 一応神坂高校、三年ぶりの特待生って事で新入生代表の言葉を任されてるし、言う言葉も半分しか暗記してない。この男に構ってる暇は無いんだけど‥ 「何、その溜め息」 「……」 髪は蜂蜜色の優しい色。二重瞼もその下の瞳も儚さを持った綺麗な瞳なのに、口調と態度が全く可愛くない。 親父の方が数倍可愛い。 …嘘、可愛さは無いけど、親父の方がまだ可愛げがある。髭を生やしていても、煙草臭くても、ポロポロ米粒を落としても、親父の方が"まだ"。 綺麗な顔をして唾を吐きそうな態度に距離を取れば、男は直ぐにその距離を詰めて来て。 「つかさっきから思ってたんだけど、」 私が掛けていた眼鏡のブリッジに指を掛け、意図も簡単にそれを奪った。あ、 「ちょっと…!!」 「だっさい眼鏡」 「返してください」 「何処で売ってんだよ、このクソダサい眼鏡」 そう言いながら、 私の眼鏡のテンプルを両手で掴んで、目元に掛ける。 『キャーー』 『ハチ君が眼鏡してるー』 『可愛いっ』 『尊い~っっ』 …なんて事だ。 家でホコリを被っていた親父のクソダサい眼鏡も、貴公子が掛ければまるで少し変わったデザインの、ブランド品のように見えるではないか。
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