甘い話には罠がある

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「面白い(ツラ)してんな、アンタ」 …何故、二回言った? 分かってるよ、毎日自分の顔を見てるあなたに比べたらとんでもなく面白い面をしてる事は。だから二回も言わな「ッッ…ー!??」 気付いたら、 千冬の顔が溢れる程視界に映り込んでいて。 唇に感じる、生温い感触。 これでもかってほど開いた視線の先には、長い睫を伏せ、こめかみには青アザ。形の整った二重瞼を閉じた男が居る。 鼻から漏れる息が肌を掠め、その熱に比例して体が熱くなるのを感じ気持ち悪さが襲った。思いっきりその体を押し、尻餅を付いて後ろに逃げる。 「ちょっ、何してるんですかっ!??」 びっくりする私を他所に、 当の本人は平然とした態度で、口端を舐める。 「不味っ」 …… 「…は?(怒)」 「鉄の味がする」 それは、あなたの口がね? 決して私のキスの味じゃないからね? 勝手にキスして一言目が『不味っ』てデリカシー無さすぎるだろっ!!!乙女の心を何だと思ってるんだ!!! …… …イヤ、 恐らく今は私の事を男だと思ってるんだから、男の心を弄ぶ…?コイツ、こんな顔してホモなのか…? 口元から舌を出し眉をしかめ、いかにも気分悪そうにする千冬を見て、口を押さえて固まっていた私も(すこぶ)る気分が悪くなる。 千冬が再び背凭れに体を沈め、そのままかくんとソファーの縁に頭を倒し、逆さの視点で後ろを見た。
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