502人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうなんですか。じゃあ私と一緒ですね」
「同い年だから敬語は良いよ」
…このネクタイ、ネックだな。
貰い物だから文句は言えないけど、さすがにネクタイは学年に合わせて買った方が良いかもしれない。
制服は一式三十万って驚愕の値段だったけど、ネクタイ一つならさすがに優しい値段だよね…?
「ここです」
ネクタイを摘まんで見下ろしていた私の前で、
彼女が足を止める。
私が知ってる渡り廊下の倍の幅がある広い空間に、ご丁寧に自販機が5台並んでいる。
…良かった、普通の自販機だ。
これでクレジットカードしか使えません、なんて事が無ければ、問題なく買える。
「ありがとう、助かった」
「あのっ!!」
「?…ん?」
「名前と連絡先、教えて貰えませんかっ!??」
「…え?」
「さっき見た時、凄いカッコ良い人だなぁと思って。良ければお友達から仲良くして貰えませんかっ!??」
「……」
胸元にスマホを握り締めたまま、ガバッと頭を下げる女の子。それに私は、表情が引き攣って仕方無い。
…この子も、私を男だと勘違いしてる?
何で?制服がズボンだから?
でも神坂の制服は注文時に自由にオーダー出来るようになっていて、女子でもパンツスタイルの制服を使う生徒は多いって聞いた。
現に校舎に入ってからも何人かそういう生徒を見たし、だから私も何の違和感も持って無かったんだけど…。
…そういえば、愁に前髪縛られたままだった。
今まで気付かなかったけど、私って男顔なんだ…。
若干ショックを受けながらゴムを外そうとして、目の前の彼女が揺れる瞳で返事を催促してる事に気付き、手を止める。
最初のコメントを投稿しよう!