甘い話には罠がある

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「そうなんですか。じゃあ私と一緒ですね」 「同い年だから敬語は良いよ」 …このネクタイ、ネックだな。 貰い物だから文句は言えないけど、さすがにネクタイは学年に合わせて買った方が良いかもしれない。 制服は一式三十万って驚愕の値段だったけど、ネクタイ一つならさすがに優しい値段だよね…? 「ここです」 ネクタイを摘まんで見下ろしていた私の前で、 彼女が足を止める。 私が知ってる渡り廊下の倍の幅がある広い空間に、ご丁寧に自販機が5台並んでいる。 …良かった、普通の自販機だ。 これでクレジットカードしか使えません、なんて事が無ければ、問題なく買える。 「ありがとう、助かった」 「あのっ!!」 「?…ん?」 「名前と連絡先、教えて貰えませんかっ!??」 「…え?」 「さっき見た時、凄いカッコ良い人だなぁと思って。良ければお友達から仲良くして貰えませんかっ!??」 「……」 胸元にスマホを握り締めたまま、ガバッと頭を下げる女の子。それに私は、表情が引き攣って仕方無い。 …この子も、私を男だと勘違いしてる? 何で?制服がズボンだから? でも神坂の制服は注文時に自由にオーダー出来るようになっていて、女子でもパンツスタイルの制服を使う生徒は多いって聞いた。 現に校舎に入ってからも何人かそういう生徒を見たし、だから私も何の違和感も持って無かったんだけど…。 …そういえば、愁に前髪縛られたままだった。 今まで気付かなかったけど、私って男顔なんだ…。 若干ショックを受けながらゴムを外そうとして、目の前の彼女が揺れる瞳で返事を催促してる事に気付き、手を止める。
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