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ちらりとそれに視線を落とす。
明らかに綺麗な校舎と、高そうな制服。お金のかかったパンフレット。
…それだけで、私には縁の無い学校だ。
「無理に決まってるじゃないですか」
「ここ、私立の高校で少し離れた場所にあるんだが、特待生制度を導入してるんだ」
特待生…
「入試の成績で特待生に選ばれれば学費が免除される。とりあえず一年、それからは成績に応じてになるが努力家のお前なら大丈夫だろ」
「待ってください、特待生って…」
「今だけじゃ無くこの先の事を考えた時、やっぱり高校は出た方が良い。まだ一年あるしお前なら余裕をもってそこを狙えると思ってる」
「……」
「地元から離れてるが宿舎も完備してるし、特待生ならその使用料も免除して貰える筈だ」
ペラっと、担任の指がパンフレットを捲る。
「お前のお母さんとは昔の馴染みで良くして貰ったんだ。知り合いの知り合いの…知り合いに、子供がここを出た人が居るから、制服も教材もある程度は譲って貰えるかもしれん」
「……」
「どうだ?気持ちを切り替えて、挑戦してみないか?」
開いたまますっと押されたパンフレットに指をかけた。
確かに魅力的な話。
学費免除されれば生活も楽だし、宿舎に入れば生活費も楽になる。親父だけならバイトしてお金を送れば何とかな…、して貰わなきゃいけないけど。
「…考えてみます」
そう言えば、先生は少し安心したように笑った。
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