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甘い話には罠がある
それから一年、馬鹿みたいに勉強をした。
努力と丈夫な体しか取り柄の無い私が、風邪を引く事無く皆勤賞で学校に通った。
頭がおかしくなる程勉強して、バイトして、勉強して、バイトして…。
家に居て何もしない親父がさすがに申し訳無いと思ったのか運送の仕事を始める程、毎日必死に過ごした。
そして晴れて一年後、手に届いた合格通知。
貰った所で飛び跳ねて喜ぶわけでも無く、それを見る自分は至って冷静で。感じたのはこれで一年間、お金の心配なく暮らせるという安堵感だった。
「良かったなぁハルヒ、合格したかぁ。じゃあ祝いに今夜は焼き肉でも…」
「しない」
何考えてんだ、クソ親父。
働き始めたっていっても週に3日、私が一ヶ月で稼ぐバイト代の三分の一も満たない稼ぎの奴が、良くもまぁ高級国産牛持ってそれ言うな。
親父が持っていたパックを棚に戻して、
「あぁ‥」
「……」
変わりに半額シールが貼られた豚肉のパックを手に取る。週に3日っていっても、毎回休まず行ってくれてる訳だし‥
「もやし増し増しの焼き肉なら」
「はるひぃぃぃーー」
…止めろクソ親父、恥ずかしい。
スーパーの精肉コーナーで所構わず抱き付いてくる親父を何とか引き離して、必要な物だけカゴに入れてスーパーを出る。
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