甘い話には罠がある

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一生懸命努力をした。 この先、社会に出て困らない為に。 いつまで親父の世話をしなきゃいけないか分からないけど、お母さんに囚われたままの親父はきっと一生再婚しない。 ――子供みたいな人だから。自分の会社を持っていた時はケラケラと笑い人望が厚くしっかりした人だったけど、お母さんが死んで親父も変わった。 笑ってるけど、悲しそう。 お金がなくても、仏壇の花と線香を切らした事は無い。 だらだらと仕事をして、たまに‥結構な頻度で競馬やパチンコを楽しんで、その背中を蹴り上げて、親父は拗ねて。それから数日は家でゴロゴロ暇を潰して。 私はそんな親父の隣で、生きていく為に必要最低限の生活を守るのが役目だ。 『…ハルヒ、お父さんをお願いね。あの人無鉄砲で危なっかしいから、ハルヒが守ってあげて』 …それで良い。 お母さんとの最期の約束を、私は守る。 どうしようもない人だけど親父の事は嫌いじゃないし、なんだかんだ一緒に居て楽しい。 この生活が守れるなら何でもする。 その為にはまず、 特待生の位置を守ったまま高校を出ないと。 夢も希望も何も無いけど、強い意思で鞄の紐を握り締めて、大層立派な校門を潜った。 数分後‥ 「アンタ、何者?」 変な奴に捕まった。
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