甘い話には罠がある

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……ちょっと待て、何だこの状況。 目の前にはアッシュっぽいクリーム色の髪が目元に掛かるやたら綺麗な顔立ちの男。身長差のせいで俯き気味に私を見ているせいか、視線が冷たい。 派手な髪から覗く耳にはピアス。綺麗な肌はファンデでも塗ってんのかと突っ込みたいきめ細やかで、突っ込む間も無く壁にドンされている。   「アンタ、何者?」 何者と言われても…  手に持つそれを前に突き出して再度、数十秒前に発した言葉と同じ事を復唱した。 「落としましたよ」 「あ゛?」 「……」 ……ヤバイ、会話にならん。 酔った時の親父以上に取り扱いが難しいぞこれ。 あ゛?って何。『ありがとう』の略か? それにしては刺々しい言い方だけど…。 親父なら蹴るか平手打ちをすれば簡単に静かになるけど、初対面でさすがにそれを試す訳にもいかない。 だってこの人、素面でこれだよね? 綺麗に通った二重瞼はどっちかっていうと外国人ぽい。もしかしてハーフ?クォーター?日本のルールを知らない時差ボケ外国人か? …イヤ、外国でも通用する普通の会話だよなこれ…   「だから、落としましたって」 「お前、誰に口聞いてるか分かってんの?」 「分かりませんよ初対面なんだから」 若干イラッとして目を逸らし早口で言葉を並べたら、それに反応してチッと大きな舌打ちが聞こえる。
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