甘い話には罠がある

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『……ねぇ、なにアレ?』 『ハチ君何してるの?』 『一緒に居るのって知らない人だよね』 『でもネクタイの色、青だよ』 『二年にあんな人居たっけ?』 聞こえた声にハッとして、 自分のネクタイを見下ろした。 私が譲り受けたのは青のネクタイ。それ以外入って無かったし全学年統一かと思ったら、どうも違うらしい。 確かに良く見てみれば、他の生徒は青以外にも赤、緑と三色に分かれている。 目の前で首裏に手を置き、挑発するように見下げてくる男の首で緩められてるネクタイも、青。 …という事はこの男は二年で、私は一年なのに二年の制服を着てるって事だ。滅茶苦茶不審者じゃないか。 「一年通って俺の事知らねぇの?」 でも男が突っ込みたいのは、どうもそこじゃないらしい。目の前の二年(わたし)が、自分の事を知らないのが気に入らないみたいだ。 「すみません、今日始めてここに来たので」 「はぁ?お前不登校かよ」 「一年です。この制服は知り合いの知り合いのそのまた知り合いから譲り受けた物で、ネクタイに色があるの知らなかったので」 「…貧乏人か」 はいそうです貧乏人ですよ。 まるで汚らわしいと言わんばかりに壁から手を離し距離を取った男。だぼっと羽織ったブラウンのカーディガンに手を突っ込み、上から私を見下ろす。
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