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やばい! 見失ってしまう!
僕もその集団に突入した。
「すみません、すみません」
そう言いながら、人を掻き分けて彼女を追いかけた。
なんとか大学生の集団を抜けると、走り去る彼女の後ろ姿が見えた。
えー! なんで走っちゃうんだよー!
急がないと見失ってしまう。彼女は何をそんなに急いでいるんだ。
「ちょ、ちょっと! 新井さん!」
僕の声は、やはり届かない。
僕は新井さんにハンカチを返したいだけなんだよー!
走り去る彼女を、走って追いかける僕……
これってさ、どういう状況?
鬼ごっこ?
んなわけねえ……
なんだこれ……
も、もう息が辛い……
足もヤバい…
「あ、あら、新井さ……」
肩を上下に動かして、ゼーハーゼーハーと息をする。さすがにそろそろエネルギー切れか……。
ペースは落ち、とうとう足が止まった。すると、不思議と彼女の足も止まった。同じように走ってきただけあって、彼女もそこそこ疲れていて、肩で息をしている。
「あ、新井さん、ねえ、なんで、走っちゃうの?」
「田辺くんが、追いかけて、来るからじゃん!」
「え?」
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