ハンカチが繋ぐ点と点

3/6
前へ
/6ページ
次へ
 やばい! 見失ってしまう!  僕もその集団に突入した。 「すみません、すみません」  そう言いながら、人を掻き分けて彼女を追いかけた。  なんとか大学生の集団を抜けると、走り去る彼女の後ろ姿が見えた。  えー! なんで走っちゃうんだよー!  急がないと見失ってしまう。彼女は何をそんなに急いでいるんだ。 「ちょ、ちょっと! 新井さん!」  僕の声は、やはり届かない。  僕は新井さんにハンカチを返したいだけなんだよー!  走り去る彼女を、走って追いかける僕……  これってさ、どういう状況?  鬼ごっこ?  んなわけねえ……  なんだこれ……  も、もう息が辛い……  足もヤバい… 「あ、あら、新井さ……」  肩を上下に動かして、ゼーハーゼーハーと息をする。さすがにそろそろエネルギー切れか……。  ペースは落ち、とうとう足が止まった。すると、不思議と彼女の足も止まった。同じように走ってきただけあって、彼女もそこそこ疲れていて、肩で息をしている。 「あ、新井さん、ねえ、なんで、走っちゃうの?」 「田辺くんが、追いかけて、来るからじゃん!」 「え?」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加