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下校中、僕は彼女の約十メートル後ろを歩いていた。
実は、彼女のハンカチがポケットからポロッと落ちたのを見てしまい、拾ったのはいいが声をかけられずにいた。
僕は田辺基弘、高校一年生。
先日、同じクラスの新井幸奈に告白して、見事玉砕。そりゃそうだ。学年一モテると言われる美少女だ。かくいう僕は、地味で何の取り柄もない隠キャ。誰がどう見ても釣り合わない。
フラれたのも相まって、気まずくて声がかけられずにいるのだ。
でも、よくよく考えたら、そんな隠キャな僕が勇気を出して学年一の美少女に告白するって、我ながらすごいと思う。身の程知らず……そう言われても仕方ない。ただ、僕は変わりたかったんだ。
彼女に告白して自分は変わるんだと、あの日の自分に約束した。
それなのに今の僕はなんだ! 彼女がハンカチを落としたことも伝えられずにいる。これでは何のために告白したのか、何のために変わりたいと思ったのか、分からないじゃないか。
ただ「ハンカチ落としたよ」と、そう言えばいいだけ。フラれたとか関係ないさ!
少し早歩きをした。彼女に追いつくために。
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