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兵頭一真
僕は、びっくりした。
「お、お父さん……、ぼ、僕はまだ高校生だし、お父さんにも今日、初めて会ったばかりです!」
僕は、そう、動揺しながら言った。
「……優太、分っている……そこを、どうか頼む……私が、父親として頼む……ただ一つのお願いだ」
お父さんは、声を絞り出すように言った。
たった一人の肉親である、お父さんの命は、もう絶えようとしている。
僕は、もう、その時、正常ではなかったのかもしれない。
「お父さん! 分りました。僕が、後を継ぎます!」
気が付くと、そう答えていた。
「そうか……ありがとう、優太……」
お父さんの目から、涙がこぼれた。
お父さんは、そばにいた、兵頭を見た。
「兵頭……優太はまだ、幼い……お前が父となり、母となって、優太を支えてくれ……」
「組長! 分りました。私が必ず、坊ちゃんをお守りいたします!」
兵頭が、誓った。
すると、お父さんの手の力が抜けて、ぱたりと、落ちた。
お父さんは、絶命した。
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