若い頃の兵頭

1/1
前へ
/35ページ
次へ

若い頃の兵頭

a81ef264-c542-4009-af13-33915c91bbfe 抱き締められた兵頭の胸は、温かくて、逞しかった。 僕は、今まで、人に抱きしめられたことがなかった。 お母さんは、朝から晩まで、僕を育てるために働き通しだったし、学校に、友達もいなかった。 僕は、なんだか、嬉しいんだか悲しいんだか分からない気持ちでいっぱいになった。 そして、兵頭の胸の中で、号泣してしまった。 そばにいたコテツが、一緒に泣きながら言った。 「組長! これからは、オレたちがお守りしますから!」 「そうよ、息子ちゃん! あたしたちが今日から家族よ!」 王子が、しゃっくりを上げて、泣きながら、叫んだ。 こうして、天涯孤独だと思っていた僕に、新しい変わった家族が出来た。 「組長、ハンカチとちり紙は、持たれましたか?」 兵頭が、三角巾を被り、かっぽう着姿で、手作り弁当を渡してくれながら言った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加