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若い頃の兵頭
抱き締められた兵頭の胸は、温かくて、逞しかった。
僕は、今まで、人に抱きしめられたことがなかった。
お母さんは、朝から晩まで、僕を育てるために働き通しだったし、学校に、友達もいなかった。
僕は、なんだか、嬉しいんだか悲しいんだか分からない気持ちでいっぱいになった。
そして、兵頭の胸の中で、号泣してしまった。
そばにいたコテツが、一緒に泣きながら言った。
「組長! これからは、オレたちがお守りしますから!」
「そうよ、息子ちゃん! あたしたちが今日から家族よ!」
王子が、しゃっくりを上げて、泣きながら、叫んだ。
こうして、天涯孤独だと思っていた僕に、新しい変わった家族が出来た。
「組長、ハンカチとちり紙は、持たれましたか?」
兵頭が、三角巾を被り、かっぽう着姿で、手作り弁当を渡してくれながら言った。
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