髪を下ろした兵頭

1/1

45人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

髪を下ろした兵頭

a0e9e259-d019-4600-987f-9440213731ff 「はい……優太です」 僕は、その手を取ろうかどうしようか、迷ったが、その人が、父親だと思うと、知らぬ間に手を握っていた。 父親は、涙を流していた。 「すまなかったな……母さんが死んで、一人でさぞ辛かったろう……」 そう、言った。 僕は、思いもせず、涙が出た。 「お、お父さん……」 お父さんの手は、温かくて、大きかった。 「優太……、私は、ヤクザの組長だ……。この八神組は、みんな、世の中からはじかれた寂しい者たちが集まった組なんだ……」 お父さんは、苦しそうに話した。 「……だから、私が死んで、この組がなくなってしまっては……皆が行く場所がなくなってしまう……」 僕の手を握るお父さんの手に、死にそうな人とは思えない強い力がこもった。 「優太……、この八神組を……継いでくれ……」
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加