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よく空を天国に例えるように。
消えた命が夜空の星になったと云われるように。
俺自身もふと空を見上げ、懐かしさと優しげな温もりを得ることはある。
何年も前に突然逝った家族が心によみがえって…
墓参りをすればそこに遺骨と共に魂も眠っている気がするし、仏壇に手を合わせればそこに遺影と共に魂が残っている感じもする。
魂はあの世へ送られたのだろうか?
もしくはあの世とこの世を往来できるのか?
そもそも残された者の錯覚なのか…
両親の墓のある寺の住職は、法要のたびに難解な仏教をわかり易く話してくれたっけ。
―――お経はこの世の苦しみから解き放ち、穏やかな心へと導く教えの言葉を唱えている。
仏教では「輪廻転生」故人が再び生まれ変わると考え、お経を唱え魂にちからを与える供養をするのだと。
それはお経を聞いた人にも施され、哀しみが癒されるよう励ましでもあると。―――
俺が住職に最後の挨拶に伺った時も、涙を流しながら俺の苦痛を祓う為にお経を唱えてくれた。
それから…
「貴方が旅立つ時、私が “幸せであれ”と強く御祈りすると約束します。何も恐れず、大切な物だけを想って、そのお命を全うしてください。必ずや共に輪廻させましょう」
住職は仰った。
その時は幾度も礼をしたけれど、もしかすると……住職のお陰で彼女と再会できたのかもしれない。
まだ本当に大事なことを忘れていたから。
今ならわかる、幸せの意味も大切な物も。
俺にとって彼女が幸せで生きてくれること以外、大切な物なんてないってこと。
住職の言葉を信じよう。
俺にはもう……ちからが無くとも、
いつも助けてくれる優しい人達を頼って、ただ彼女の幸せを願おう。
彼女がずっと笑顔でいられることを祈って、俺は旅立とう。
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