Last Message.

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b23cd616-add5-4eee-a8fb-735192a587e0 『 ぜんぶ 忘れて 』 あの日、彼女の耳に囁いた。 死を覚悟した……俺の最後の願い。 病室のソファに並んで腰掛け、鉛のように重い体を彼女の肩に委ねて、俺は細く浅い息をしていた。 いつ、声を出せなくなるかわからない。 気を緩めればすぐ現実の世界を遠のいてしまう。 カレンダーは宣告されたラストの月に捲られたはずだ。 すぐそこに、手の届く距離に……死の世界がある。 ぴったりとくっついている彼女も、それはわかっているだろう。 そのうえで限られた時間を心地良く、寂しさの欠片も感じさせないように、俺のそばに寄り添ってくれている。 そんな情の深い彼女に、ちゃんと伝えておかなければいけない。 男らしく、なんてカッコつかなくて… どうか届いてくれっ―――と絞り出した弱々しい声。 「…うん」 震え混じりの掠れた返事。 全てを受け入れてくれるその優しい声に俺は安堵する。 「ありがと」 心からの感謝を彼女に。 今ある限り精一杯の声量で伝えて。 引き攣る瞼を少しだけ上げ…  彼女の手を瞳に写し撮ると、その愛しい小指に自分の小指をそっと絡ませた。 ――― 約束な ――― 愛の言葉は口にできない。 それを俺が声に出してしまったら… 彼女がこれからも歩む人生の足枷になる。 だから替わりに… ぜんぶ俺のことは忘れて、 どうか幸せになって欲しい。 そう、祈りをこめた指切りだった。 婚約者がいた彼女。 余命短い俺との再会が彼女の未来の幸せを、、、壊してしまった。 それでもなお… 俺の手を強く温かい両手で包んでくれる。 そして片時も離れようとせず、俺の命を守ってくれている。 俺は? 俺は死んでも彼女を守ってやれるのかな? 死んだら、俺の魂は何処へ―――? 何時何時も強く願って、生きてるうちに誓いをたてれば、肉体は滅びても意志は何処かへ継がれるのか??
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