14人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
いつか終わる One Day Dream
何とか3人で大病院まで運び、東雲は治療を受けることになった。
そしてここで僕は知ったのだが、京子さんの姿は誰にも見えていなかった。
思えばスマホとか財布とかだれでも持っていそうなものだったのにそれを取り出さなかったのはそれ単体が宙に浮くように見えたからなのかもしれない。
それでも僕にだけはしっかりと見えて話も出来るのは不思議だったけど。
「なぁ伊吹、東雲は大丈夫なのか?」
「……今すぐ消えちまうなんてことはない。さすがに倒れた時は肝を冷やしたけどよ」
「そうか、まだ時間はあるんだ」
どれだけ残されているかは分からないけど伊吹の焦りようではきっと遠くは無いんだろう。
「なぁ蓮、俺がやってることは正しいのか?」
「それは、どういう事?」
「言葉通りの意味だよ、俺はこのままあの人を除霊しちまってもいいのかってことだ」
ここに来るまでに伊吹から説明はされた、幽霊と人間は混ざってはいけないって。
それは悪霊?とかして人を襲うからではないらしい。
「もしそんなことをしたら次は俺もって霊たちが溢れてくる、だけど此処に留まり続けたら帰るべき場所を見失っちまう、だからお盆も時期限定なんだよ」
それは唯一許された、残してきた家族との再会だからと伊吹は語る。
「だから俺たちがいる、此方にさまよう幽霊を除霊する存在がな。でも、あんなのは初めてだったんだよ」
「東雲と京子さんの事?」
「あぁ、道理を捻じ曲げてまで、自分を犠牲にしてまで霊を呼び寄せるのはよ」
聴けば数日前から伊吹は東雲の周りで起きていた異変を探っていたようだ。
さすがに個人的な部分に触れなかったのはせめてもの良心だったらしい。
「なぁ蓮、俺は東雲を救いたい。それにあの幽霊も東雲があんだけ執着してるんだ。せめて静かに送ってやりたい。だけど俺はどうしたらいい?どうやったら東雲から生きる希望を取り戻せるんだ」
顔を伏せ悩み続ける伊吹と同じように僕もまた頭を悩ませていた。
あの叫びは東雲が今まで抱えてきた闇だ。
あんなものを抱えて今まで自分を追い詰めていたことに全く気が付かないでいたなんて。
(だってお姉ちゃんは、私のせいで……)
ここに来る前に残した言葉が脳裏にこだまする。
本当にそうなんだろうか?本当に京子さんはそう思っていたのだろうか?
「ごめん伊吹、俺は京子さんに話がある。東雲の事見ていて欲しい」
「分かった、何かあったら連絡するからよ」
それだけ残して表玄関の前で待っている京子さんの所に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!