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雅の原動力は愛しの先生
朝、目覚まし時計の音で目が覚める。
「先生に会いに行かなきゃ!」
わたしは制服に着替えて髪をセットする。
先生にはいつも可愛くみられていたい。
階下に降りると、お母さんがご飯の準備をしてくれていた。
「あら、雅おはよう」
「おはよーお母さん!」
「雅起きてたのか」
後ろに立っているお父さんが眠い瞼をこすってあくびをした。
「うん、おはよう!」
にっこり笑うとお父さんも「おはよう」と返してくれた。
わたしはご飯を超高速で食べ終えると
「ごちそうさまでした!」
わたしは玄関で靴を履く。
お父さんも靴を履いている。
「雅、お父さんと一緒に行くか?」
「いや、紺くんの姿を一分一秒も早く眺めていたいから一人で行くよ」
わたしの言葉にお父さんはショックを受けたような顔になった。
「お父さんと紺くんどっちが一番……?」
「紺くん」
秒で答えるとお父さんは泣きそうな顔になった。
そんなお父さんを無視して
「いってきまーす!」と声を上げた。
◯◯◯◯◯
「せんせーい」
わたしはパソコンに向かっている先生を覗き込んだ。
「またか、林」
「えへへー、いいじゃん、先生何してるの?」
「保護者用のプリント作ってんだよ」
言いながら先生がキーボードを打つ。
先生の横顔カッコいいな。
すると、先生がこっちを向いた。
「なにニヤニヤしてんだよ」
「んふふ、なんでもなーい」
わたしはにっこり笑い
「先生、結婚しよう?」
と先生を見つめた。
「無理です」
にっこり笑う先生。
「えぇーーー、ケチぃ」
わたしは頰を膨らませた。
「失礼しまーす」
よく知った声が職員室に響く。
「雅、やっぱりここにいたのね。もうすぐチャイム鳴るし帰るよ」
春ちゃんがわたしの首根っこをつかむ。
「ま、待って、春ちゃん!もう少しだけ〜」
「ダメよ。青木先生、お邪魔しました」
春ちゃんがぺこりと頭を下げて、職員室を出ていく。
「あ〜〜」
わたしは引きずられながら
先生に手を伸ばした。
「授業頑張れよ」
先生がキラキラした笑顔で笑う。
かっこいい……じゃなくて。
「せんせーい!」
声を上げたところで
扉はピシャリと閉められた。
◯◯◯◯◯
「うぅ……春ちゃんの意地悪」
わたしは春ちゃんを涙目で見つめた。
「雅。職員室に毎日通ってるでしょ。迷惑だからほどほどにしなさい」
春ちゃんがため息をつく。
め、めいわく?!
「め、めいわく?!って、顔しないで。あなたが
毎日職員室に行ってると、まともに仕事できないわよ。最悪嫌われるわね」
き、きらわれる?!
「そんなの嫌だーーー!」
わたしは頭を抱えた。
「それに、押してダメなら引いてみろって言葉もあるしね。振り向いてくれるかもしれないわよ」
春ちゃんは、そう言って授業の準備をし始めた。
うぅ……
そんな。毎日先生の顔を見るのを楽しみに
学校に来てるのに!
『最悪嫌われるわね』
やだやだやだーーー!!
押してダメなら引いてみる、か。
そうか、これは恋の駆け引きだと思えば!
うぅ……先生に会えないのはつらいけど、
やってみるしかない!
わたしは唇を噛み締めたのだった。
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