先生を好きでいるのをやめてから

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先生を好きでいるのをやめてから

先生を好きでいるのをやめてから一年が経った。 あっという間に、季節は春になり、花々が我を見よと言わんばかりに咲き誇っている。 「ねぇ、今年の担任聞いた?」 春ちゃんが話しかけてきて、上の空だった意識は 現実に引き戻された。 「聞いてない」 そういえば、三年生になったんだっけ。 「青木紺」 え? 思わず春ちゃんの顔を見る。 「あなたの大好きな紺くんよ」 ニッコリと笑う春ちゃん。 「大好きじゃないし、あんな人、大嫌いだし」 「ふーん」 春ちゃんがわたしの顔を覗きこむ。 「な、なに?」 「じゃあ、どうして泣いてるのよ」 え? 慌てて頰を触ると濡れていた。 どうやら、わたしは泣いていたらしい。 涙が止まらない。 あぁそうか。 わたしは先生のことまだ好きだったんだ。 好きだから、先生と一緒にいられなくて つらくて、もどかしくて。 担任と生徒、これ以上の関係になれないのが 悲しくて。 「雅、好きでいることはやめなくていいのよ」 春ちゃんに抱きしめられた。 「叶わない恋だとしても相手を想うのは自由だから」 春ちゃん…… 涙腺が緩む。 「うわぁぁーーーん」 春ちゃんがわたしの背中をさすってくれる。 しばらくしてわたし達は体を離す。 「今までの二人を見てて分かったわ。あなたたちの関係は今までと大きく変化してる」 「えっ」 「だから、頑張りなさい、雅」 微笑む春ちゃんにまたも泣きそうになった。 『諦めろ』ばかり言ってた春ちゃんがこんなこと言うなんて。 わたしは先生のことが好きだ! 先生と生徒だからってなんだ! その壁を乗り越えて見せる! わたしは両頰をパンッと叩いてニッコリ笑った。 「うんっ!」
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