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ああ、なんて恐ろしい。両親の様子を見て、俺と兄貴は震えあがった。
例のチョコレートのお菓子。キノコ派とタケノコ派の間には、深い深い溝がある。時にはその溝に川どころかマグマが流れるほど。両親はどちらもキノコ派だったが故に、円満に結婚したはずだったのだが。
息子の俺達は知っていた。最近、父がタケノコの魅力に気付いてしまったことを!
そして、こっそり食べていたタケノコのお菓子の箱を、母に見つけられてしまったというわけである。生涯をキノコに捧げると誓い合った夫婦にとって、それは明確な裏切りに他ならないのだ。
「や、やばいよ兄貴……」
弟が掠れた声で言う。
「お父さん、キノコだらけの異空間に連れ込まれて出てこないんだけど……時々悲鳴みたいなのが聞こえてくるんだけど一体中で何が……」
「か、考えるのはやめよう。SAN値が減る……」
「ていうか、ぼく達最近、ポッキーに浮気してるんだけど大丈夫かな……」
「大丈夫じゃない、問題だ」
第三勢力に流れている俺達の実情は、なんとしても秘匿にしなければならない。
キノコもタケノコもポッキーも美味しいが、お菓子はほどほどに楽しむのが一番なのだから。
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