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今回のことで、自分には考える力が足りない。とらんぷは実感したので、どうしてもお礼を言いたかったし、謝りたくなったのである。
久志朗は腕を伸ばして、元気のないらんぷの頭をそっと撫でた。
「私にも都合が良かったんやわ」
「?」
「今回のことで、らんぷちゃんの人となり知ろう思てたんやよ」
久志朗の言葉に、らんぷは目を丸くした。
「……安心したわ」
「安心?」
「面白い子で、安心した」
「らんぷ、面白かった?」
「うん。なんからんぷちゃん見てるとコメディ見てるみたいで、楽しい」
それは、褒められているのか?一瞬考えてみて、少なくとも暗い気持ちになるわけではないということだと結論づけて、らんぷは満面の笑みで「それはよかった!」と答えた。
「なんで喜ぶんや」
久志朗は心底楽しそうに笑った。その笑顔が心の底から笑っているように見えたので、らんぷも嬉しくなって笑う。
これからの結婚生活。前途多難だと思っていたけれど、何となかなるかもしれない。
明るい予感に、らんぴは一層笑みを深めた。
そこへ「買って来たよー!あ、僕を仲間外れにして何でそんなに楽しそうにしてるのさ!」ユミルが飛び込んできて、一気に騒がしくなる。
そこへ山吹が出来立てのクッキーを運んできて、香ばしい幸せの香りが食堂内を包み込んだのだった。
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