和傘

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和傘

「らんぷちゃん、ちょっとお茶しよか」 詩枝の家から帰ってきて早々、久志朗は手にしていた和傘をらんぷには渡さずに、まるで取り扱い注意の品でも渡すかのように、それを翠隣に預けた。 彼はらんぷを茶に誘い、2人は食堂へ赴く。 丁度、らんぷも話したいことがあったのでよかった。 いつものように丸い円卓の対面に2人は腰かけて、黒豆茶が届くと、久志朗はおもむろに口を開いた。 「……らんぷちゃん、さっきの詩枝さんのお話聞いてどう思った?」 「らんぷは……からかさ小僧さんに近いあやかしさんが犯人じゃないのかなと思った」 正確には、その可能性が非常に高いと思った。詩枝が指で叩いたあの音の規則。あれは人間が雨の中でさせる音にしては不自然だ。 「なんでそう思うん。やっぱり、雨が降る夜に現れるて聞いたから?」 違う、とらんぷは首を振る。 「確かにからかさ小僧さんは、雨の中に描かれている画をよく見かける。でも、それだけじゃないんだ」 というと?久志朗は真剣な瞳で言葉もなく問いかけた。 「詩枝さんが机を叩いて教えてくれたあの足音の規則は、高知のお屋敷でよく雨宿りに来ていたからかさ小僧さんのそれに良く似てる……気がするんだ」 その言葉に、久志朗は目を丸くした。
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