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「それに詩枝さんの話聞いてますます怪しい思てな」
「……あの傘が勝手に傘立から出てたり、雨降った日に出かけてもないのに濡れてるって言ってたこと?」
「そう、その話」
肯定する久志朗に対して「もしかして」とらんぷは指の先で顎をつまんだ。
「あの傘が夜中に出て行って朝顔むしり取って柳の木にばらまいてる犯人だと思ってる?」
「ただの推測やけど。偶然言うにはあまりにも出来過ぎてる気するんやわ。詩枝さんは元舞妓さんやんか。家に昔使ってはったおこぼ、あっても可笑しないんちゃう?」
「久志朗さん、探偵さんみたいだね」
「それは、探偵さんに失礼やわ。それにまだ分からへんことあるから、喜べへんねん」
「もし、詩枝さんの持ってたあの和傘が犯人だったとして、どうしてそんなことをするのか?」
「そう、その通り。詩枝さんとあの柳の木に何か……」
言葉を止めて、久志朗は「いや……ちゃうわ」と何かに気づいたように顔を上げた。
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