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「あの傘造ったんは、もう亡くなった和傘職人さんて言うてはったな」
「うん、言ってたね」
「そしたら関係あるんは、夜美人さんとその和傘職人さんの方かもしれへんな」
「?」
「その和傘職人さんが亡くなったんは2年前の夏の終わり。つまり、秋の始まり。そんで、夜美人さんが急に暴れ出したんも、丁度その頃やろ」
「時期が重なってるね。確かに偶然って言いきれないや」
「そうやね。つまり、和傘職人さんの死が、夜美人さんに何らかの影響を与えたて考えるのが自然やわ」
らんぷは、それに頷いた。だが、そうなると少し可笑しな点がある。2人に関係があったとして。あの和傘があの柳の木へ朝顔をばらまく理由はなんだ。いや、その前に。そもそも物が意思を持って動くには長い年月が必要ははずだ。
そう伝えると、久志朗は「ふむ」と少し考える素振りを見せた。
「それやったら、あの傘はあやかしやないのかもしれへんな。説明するとしたら、造った人間の思念を汲んで動くだけの怪異としか言いようがない」
「そんなこともあるの?」
「実例のあるなしは分からへんけど。強い思念の宿る器物の気配は、ほんまにあやかしの気配によう似てる」
久志朗はそう言って、しばらく考える素振りを見せてからまたおもむろに口を開いた。
「まあ、ここまで推測出来たんやったら、あとは雨の日にでも試してみるしかないなあ」
「あの和傘が本当に動くか試してみるんだね」
「そ。まあでも雨の日にしか動かれへんのやったら、その雨の日までにやっとかなあかんことしとかなな」
首を傾げるらんぷに、久志朗は目を細める。
「夜美人さんと和傘職人さんとの間に何があったかちゃんと聞かなあかんやろ?」
久志朗の言葉に、らんぷは「聞くって誰に?」とさらに首を傾げた。
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