夜顔

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夜顔

その翌日。久志朗は、朝早くにどこかへ出かけて昼前にくたびれた様子で帰って来た。 「あのクソじじい。……久しぶりにおうたけど、ほんまに図々しいわあ」 お昼時。らんぷは食堂で食後のプリンと大きなバニラアイスとサクランボの乗ったメロンソーダを堪能していた。 帰ってきて早々、そんならんぷの対面の椅子に腰かけた久志朗は、結婚した時以上に不機嫌な様子だった。 「おかえりなさい、久志朗さん。どうしてそんなに不機嫌なんだ?」 らんぷは食べる手をとめて、労わるように問いかけた。 「今朝。夜美人さんと和傘職人さんとの間に何があったんか聞きに行く言うたやろ?」 「うん、結局誰に聞いたんだ?」 朝。見送りの時に聞いても久志朗は答えてはくれなかった。ただ「内緒や、内緒」と言われてしまって。帰ってきた彼の口から事情を聞くことになるんだろうな、とらんぷは予想していた。が、どうやら事はそう上手くいかないようである。 「ほんまわな。夜美人さんが封じられてる壺持ち帰って、本人から直接聞くつもりやってん」 「えー!?」 「言うてたやろ?夜美人さんは浄め封じられて、安置されてるて」 そういえば封じ浄められたとはいえ、魂が消されたとまでは聞いていなかった。 勝手に消されたと考えてしまっていたらんぷは、今はまだ影も形も見えない夜美人に心の中で謝った。
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