夜顔

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「その依り代はなんでもいいの?」 「いや……そのあやかしの性質に似通うところがあったり、収められた魂が気に入ったもんでないとあかんなあ」 「そうなの?」 「魂と依り代が調和せんと。人間も同じや。魂と身体が合わへんかったら、居心地悪そうやろ?」 自分の魂と、身体が分離する。そんなところを想像してみると、確かに居心地が悪そうだと、らんぷは思った。 「確かに嫌だ」 「せやから、夜美人さんと調和するような依り代がいるんやけどな」 「夜美人さんは白皙の美人、お人形さんとかじゃ駄目なの?」 「それでもいけるやろうけど。いまいち決め手に欠ける気すんねんなあ──……ああ、でも、そうやね。別に特別なもんでなくてもええんやわ」 「?」 「夜に咲く丁度ええ依り代があるわ」 「夜に咲く」ということは、つまり依り代は花ということだろうか。 「何の花?」 「それはまあ、後のお楽しみや。今日の夜にもう一回山に行ってくる」 「夜の山は危ないよ」 「らんぷちゃんは、ちょくちょく私が吸血鬼やってこと忘れてへん?吸血鬼は基本的に夜の方が動きやすい生き物なんやけど」 そういえばそうだった。とらんぷは思い出す。昼間普通に活動している久志朗を見ると、吸血鬼だということをすっかり忘れてしまうのだ。
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