62人が本棚に入れています
本棚に追加
「その依り代はなんでもいいの?」
「いや……そのあやかしの性質に似通うところがあったり、収められた魂が気に入ったもんでないとあかんなあ」
「そうなの?」
「魂と依り代が調和せんと。人間も同じや。魂と身体が合わへんかったら、居心地悪そうやろ?」
自分の魂と、身体が分離する。そんなところを想像してみると、確かに居心地が悪そうだと、らんぷは思った。
「確かに嫌だ」
「せやから、夜美人さんと調和するような依り代がいるんやけどな」
「夜美人さんは白皙の美人、お人形さんとかじゃ駄目なの?」
「それでもいけるやろうけど。いまいち決め手に欠ける気すんねんなあ──……ああ、でも、そうやね。別に特別なもんでなくてもええんやわ」
「?」
「夜に咲く丁度ええ依り代があるわ」
「夜に咲く」ということは、つまり依り代は花ということだろうか。
「何の花?」
「それはまあ、後のお楽しみや。今日の夜にもう一回山に行ってくる」
「夜の山は危ないよ」
「らんぷちゃんは、ちょくちょく私が吸血鬼やってこと忘れてへん?吸血鬼は基本的に夜の方が動きやすい生き物なんやけど」
そういえばそうだった。とらんぷは思い出す。昼間普通に活動している久志朗を見ると、吸血鬼だということをすっかり忘れてしまうのだ。
最初のコメントを投稿しよう!