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『正造さんは、いつお亡くなりになったのです』
「あんたが、浄め封じられてしもたのとほど同時期。2年前の秋頃やね──突然倒れはって、そのまま病院で亡くなったて聞いてる」
『……ああ、そうですか』
そっけない返答のように聞こえたが、その実その声は震えていた。何かを察したのかもしれない彼女は『ああ、ああ』と顔を覆う。
「古傍さんの死を知らへんかったゆうことは、何か約束でもしてて、反故にされた思て怒ってたん?」
『……!』
「最初は、古傍さんの死があんたを悲しみのどん底に突き落として、結果、暴走させてしもた可能性があるんやないかて思てたんやけどな」
横顔に掛かる前髪を払って、久志朗は夜美人を真っ向から見つめた。
「あやかしが穢れを纏って暴れ出す理由は、一番よう聞くんは、人間に交わした約束を反故にされた時や。その様子から察するに、当たってるみたいやね」
『……』
夜美人はすっと顔をあげて、小さく頷いた。
「……古傍さんは、あんたとの約束を反故にしたくてしたわけやないで。……それで改めて聞くけど、古傍さんとはどんな約束してはったん?」
『……』
夜美人は少し沈黙した後、口を開いた。
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