夜に咲く朝顔

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「彼女にはもう、この地に縛られるような未練がない。静かに逝かせてあげな」 「……うん」 夜美人を包んでいた燐光が、足元から蛍のように散らばっていく。 最後。 彼女はちらりと、視線を流した。その口元には微かな笑みが浮かんでいる。 散らばる光は、そんな彼女の口元さえ呑み込んで、空高く。空高く。 夜の一点を突き抜けるように飛んでいった。 「……優しい笑い方する人だったんだね。古傍さんが恋しちゃうのも分かるなあ」 らんぷが呆然としたように呟くと、久志朗は「そうやね」と答えた。 今日は月明りの灯る夜だったら良かったのに。 そうすれば、まだ、あの光を見ていられたのかもしれない。 らんぷは名残惜しい気持ちを抑えながら、光のない底抜けの暗い夜空を見上げた。
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