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少なくとも古傍は、自分が死してなお、夜美人のことを想い、最後まで届けることのできなかった言葉を届けようとしていた。
そこには、ほんの僅かな期待くらいあったのかもしれない。
自分が死んでも、忘れないでいて欲しいという想いが。
「……らんぷちゃん」
「ん?」
「あの傘が、なんで青色の朝顔ばっかりむしり取ってた思う?」
なぜ、青色の朝顔ばかりむしり取ったのか。それはらんぷが気にしていたことでもあった。久志朗は花言葉が関係しているのかもしれないと言っていたことを思い出す。
青い朝顔の花言葉は『短い愛』『儚い恋』
それをむしり取ることの意味。
愛だの恋だの。そういった感情が未だに良く分かっていないらんぷは、自分のすっからかんな恋愛経験値を絞って考えたが、無いものを絞ったとて、何かが出てくるわけもなかった。
悪戦苦闘の表情で考え込むらんぷに、久志朗は優しく語り掛ける。
「この前、教えた青い朝顔の花言葉覚えてる?」
「うん、覚えてるよ。短い愛。儚い恋……だったはずだ」
「そ。古傍さんと夜美人さんの恋はたった一夏。せやけど、否定したかったんかもしれへんな。『一夏の恋だけれど、短い愛でも、まして儚い恋でもない』て」
優しく諭すように言いながら、久志朗は肩をすくめた。
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