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「死んだ後でも想って欲しい言うんは、生きてる方からしたら我儘やて思うこともあるかも知れへんけど。少なくとも古傍さんがそういう想いを抱えて、伝えたい言葉をどんな形でもええから伝えたいて思うて……結果、夜美人さんの心を救ったんやから、誰もそれを我儘やなんて言えへん思うねん。らんぷちゃんは、我儘やて思う?」
「思わないよ。らんぷは良かったと思う」
「それやったら、それでええ思うんやわ。実際、自分が死んだ時のこととなるとまた別の話になるんやろうけど」
久志朗は苦笑しながら、視線をらんぷへ流した。
らんぷは、その視線には気づかず「そうだね」と小さく呟く。
そしてまた花開くように笑いながら久志朗に向き直った。
「久志朗さん」
「ん?」
「らんぷの我儘に付き合ってくれてありがとう。それから、ごめんなさい」
「なんや、急に」
「いつ言おうか迷ってたんだ」
らんぷがまっすぐ目で見つめると、久志朗は居心地悪そうに視線を反らす。
「……自分の言葉に責任持っただけやから、気にせんといて」
「好きなことしたらええ」と確かに久志朗は言ったが、それでも「それを手伝う」と言ったわけではない。
それなのに、久志朗はらんぷの我儘に付き合ってくれた。
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