今日の京都はぬらりひょんの手のひらで

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 真楽が首を長くして奥をのぞけば、ゆきみやぬらりひょんもつられてそちらへと意識を持っていった。  真楽たちは音の正体に緊張を走らせるが、それは杞憂に終わる。なぜなら…… 「おじいちゃあーん……」  音の正体がはやてだったからだ。  はやては寝ぼけ眼で歩いている。乱れた浴衣のせいで肩が露出し、鎖骨をお披露目させてしまっていた。はやてが時おり見せる不思議な色香とはまた違った妖艶さはある。けれどボサボサの髪がそれを台無しにしてしまっていた。  そんなはやては眠い目をこすりながら祖父の元へとやってくる。  ぬらりひょんは急いで人間の姿へと戻り、寝ぼけているはやての浴衣を直しにかかった。 「はやてや。どうしたんじゃ? 寝ておったんじゃないのか?」  祖父の慌てようは、ぬらりひょんの刻とは雲泥の差がある。これを目の当たりにする限りではあやかしの総大将ではなく、ただの孫大好き祖父にしか見えなかったからだ。  真楽はゲラゲラとお腹を抱えて笑ってしまう。ツボに入ったようで、噎せてしまった。 「……?」  はやては真楽が笑っている理由がわからず、小首を傾げる。少女のように愛らしい見目は、未だに寝ぼけ眼な状態のよう。頭をふらふらさせながら祖父の手に触れた。 「おじいちゃ、ゆきみ、いな……どこ、行った、わか、る?」   うとうとと、今にも眠ってしまいそうなぐらいには呂律が回っていない。  名を呼ばれたゆきみは、自分を探していたのかと気づいた。急いで立ちあがり、戦隊ものさながらなポーズとともに『変身』と声をあげる。かん高い声が煙を生み、ゆきみを包んだ。そして狐の姿へと戻った。  ゆきみはかわいらしい足取りではやての側へと寄っていく。はやての白い足へすりすりして「こやぁ」と鳴いた。 「……ゆきみ? だめ、だよ。ふと、んから出たら」  寝ようねと、ゆきみを抱きしめる。そしてはやてはゆきみとともに暗がりへと消えていった。
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