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その瞬間、ぷっちーんと頭の中の何かが焼き切れた音がした。
私の首元にあるその華奢で柔なあおの手首を掴んで引き離した。
反撃されるとは思いもしなかったのだろう。
「あ、れ?」
戸惑ったようにこちらを見ている彼の背は随分と小さい。
私が本来の力を出すだけで彼を行動不能にすることは可能だ。
とても簡単なことである。
「ねぇ、紅葉。痛いよ」
私は眉を顰めるあおを無視して、そのまま彼の手首をへし折った。
「ゔ、ぁぁぁ、ったぁ。ど、うして」
甲高いあおの悲鳴が花火の音と共に空高く登っていく。
「あおがいけないんだよ? 私はあおのために死ねるほど大好きなのに。愛しているのに。なのに、ストーカーだなんて言うから。私の気持ちを台無しにするから。あおは私のことを大好きでいなきゃいけないのよ。私の気持ちを受け入れなきゃいけないのよ。それが出来ないなら、あおはあおじゃないわ。そうでしょう?」
泣きたいのは私の方だった。
それなのに、どうしてこんなにも苦しそうな顔をしているのかしら、あおは。
「違うよ。君の方だよ。君の方が僕のことを愛していないんじゃないかぁぁぁぁぁあ。痛いよぅぅ。う、ぅ……」
蹲ったあおが変なことを言っている。
「五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い、五月蝿い‼‼」
私はあおが持ってきていたシャベルを手にした。
彼は重たそうに持ち上げていたが、私にはとても軽く感じる。
「ねぇ、あおは私のために死ねる?」
シャベルを振り上げて、彼に尋ねた。
彼の可憐な返事が耳に届く前に、私はあおの脳天目掛けてそれを振り下ろした。
あおの言葉を聞くのが怖かったのだ。
私を愛していない「あお」なんてこの世界に必要なかった。
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