類稀なる青の果てに

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 私だけが取り残されて、彼らが存在したことを証明する手立てはほとんどなくなった。  死んでしまった人間には、証明も痕跡も必要ないらしい。まぁ、それはそうよね。  結局私が兄妹のどちらを好きだったのかは分からずじまい、というわけだ。  よく似た双子に恋をして、私は自分に芽生えた恋心を一切疑わなかった。  それが全ての原因だったのかもしれない。  私はあまりにも私自身が大事すぎたんだ。 「クラゲの毒で人間は死ねるものなのかしら、あおくん」  乾いた私の笑い声に返事をしてくれた「彼」はもう居ない。  果たして、絶望なのだろうか。  あるいは、虚無だろうか。  それとも、寂寥だろうか。  はたまた、歓喜なのかもしれない。  否、私の心に巣食うこの感情は愛であって欲しい。  どうしたって、愛でなければならない。  麗しい二つのそっくりな顔を並べて、ホルマリン漬けにしてみた。  狂ったようにページが増えていくスケッチブックには、彼らの造形を余すところなく描き込んだ。  それが私なりの愛し方だった。  同じ瓶の中で、すやすやと幸せそうに眠る彼らを観察して、私は今宵も安眠を得るのだ。  どぉん、どぉん――――。  夏が終わっても、打ち上げ花火の音は未だ消えない。
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