1 きっと僕も飛べるはず

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1 きっと僕も飛べるはず

「ドンッ」 静かな体育館に響く、大きな音。 君は思い切り床を蹴ると、ボールをゴールに叩き込んだ。その綺麗な姿は、まるで白鳥の様だ。 あの日君は、空を飛んでいた。 大好きなバスケットボールがしたい。そんな願いはきっと叶わない。体が弱い僕には、早く走る事だって、高く跳ぶ事だって出来ない。 でも、君の姿を見てから、僕はいつも夢を見る。シューズが床に擦れる音、ボールの皮の匂い、そして、豪快なダンクシュート。一瞬の沈黙の後、湧き上がる歓声。 夢の中の僕は、ヒーローだった。 夢が覚め気がつくと、僕は体育館にいた。君のプレーを思い出して、ドリブルをついてみる。鏡に映ったその姿は、あまりにも不恰好だ。今度はシュートを打ってみた。手から放たれたボールは、リングを掠りもせず床を叩いた。 転がるボールを拾い上げる。 「僕は何してるんだろう」 君みたいになれると思ってた。高く跳べると思ってた。僕には才能がなかった。目頭が熱い。ボロボロの床に垂れた水滴は、汗か涙かも分からない。 「ドンッ」 ふと、あの日の音を思い出す。 この音は、豪快で、繊細で、そしてかっこいい。 僕は上を向く。 静寂の中、ボールの音だけが体育館に響いている。深く深呼吸をし、あの日の君の姿を思い出す。 「よし」 僕は右足で思いっきり床を蹴った。 「ドンッ」 見上げると、抜けるような青空だ。 たぶん、僕は今、空を飛んでいる。
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