お前さえいれば、君さえいれば

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お前さえいれば、君さえいれば

 幼稚園から高校まで一緒のおれ達は所謂「ナード友達」の関係だ。いつも二人で遊んでいる陰キャコンビだと周りからは思われている。おれ達は常に二人でアニメやゲームや漫画に夢中である故に二人共彼女なんて出来る筈もない。しかし、彼女が欲しいという願望はないわけじゃない。お互いに「好きな女子」も出来たこともあったのだが、知らぬ間にその「好きな女子」はクラスのヤンキーや運動部などと言った陽キャの彼女になっており、恋心は無惨に砕けて散るのであった。  おれ達は似たような成績であったせいか、大学までも一緒になってしまった。大学に入った後はまぁいい加減に彼女を作りたいと考えているのだが、いい年してアニメやゲームや漫画に夢中なナードな陰キャなんかに彼女が出来る筈もなく、大学生活は二年を過ぎてしまった。  そんなある日。親友はそんな不毛の日々を憂いたのか、おれに溜息を吐きながら愚痴を零してきた。大学の学食にて、おれ達二人で「なにか」の話をするのはいつものことだ。 「なぁ? 僕たちこのまま一生彼女出来ないのかな?」 「別にいいんじゃね? 彼女いなくても楽しいし」 おれは気楽に考えていた。親友とアニメやゲームや漫画と言ったナード趣味に興じることが楽しかった故に「彼女が出来ない」と言う不毛の日々でも楽しい日々を過ごしていたからだ。正直なところ、親友(あいつ)さえいてくれれば毎日が楽しかったし、充実出来ていた。 しかし、親友はそう考えていないようである。 「彼女、欲しいよなぁ」 「だったら気のある誰かに告白(コク)っちまえよ」 親友はおれから視線を反らした。おれは親友(こいつ)に女に告白するなんてだいそれたことが出来るわけがないことは知っている。正直なところ、親友(こいつ)がおれ以外の友人を相手にすると挙動不審(キョド)ってしまい、ロクに会話を成立させることが出来ない。 そんな親友(こいつ)が女に告白して彼女持ちになるなんて夢のまた夢の話だ。 まぁ、おれも似たようなものだから親友(こいつ)を笑う資格はない。おれ達二人は、お互い同士しか心を開くやつがいないと言っても良いぐらいだ。 他の友人はいてもいなくてもいい紙細工の人形程度にしか思ってない。おれには親友(あいつ)さえいればいいし、親友(あいつ)だって同じことを考えていると思っているだろう。 おれが告白を促すと、親友は首が一回転しそうになる程に首を背けた。返す刀もないのはおれがよく知っている。 すると、親友はそのままボソリと呟いた。 「このまま、彼女も出来ず、女も知らずに一生が終わるのかな?」 昔は30歳を過ぎるまでにはどうにかなるだろうと考えていたのだが、昨今の情勢を見るとどうにかなる世の中ではなくなってしまったようだ。生涯未婚率も鰻登り、どうなるんだろうね? この国は?
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