仲村志帆より、ご挨拶

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仲村志帆より、ご挨拶

肌を刺すような風が吹き触れる冬、皆様如何お過ごしでしょうか。 私としては、待ち望んでいた映画の再上映を愉しみに、退屈な生存活動を継続しております。 あの作品は、只のカタルシスではございません。喩えるならそう、造花的、romance taste の甘いキャラメルマキアートと言えるでしょう。( そのクドさは、思い起こすだけで胸焼けを誘います。) 彼は絶え間なく続く筈だった藍に終止符を打ち、今一度、紅の茨道を辿り、帰路を彷徨うそうです。はい。彼の『二人静になりたいんだ』と口癖には呆れたものです。変容を遂げる混色は、" こじつけ" と振り仮名を充ててあげたいほどです。 彼の魅力?そんなもの、私が知る筈がないでしょうに。 私、彼から頂いた硝子の靴は既に捨てさせて頂きました。 そういえば、サイズ違いのドレスも姪へプレゼントしました。 南瓜も馬も苦手ですので、それらはメルカリへ出品しました。 彼の哀しむ表情が浮かびます。良い光景ですね。 私と私の間には、確実に斥力が働いております。 SとNが喧嘩して、その関係性が一向に縮まらないのです。 あら、磁石の話では勿論ありませんよ。もっと深く、温く、痛く、脆いことです。 ここで私、あの映画の好きな台詞を残します。 『山に咲く花も、風に流る青も、詩に成る夜も、刹那に過ぎる行きずりの表象だ』 眠たくなって来ました。窓の外では、もう鳥が鳴いています。 好き・無関心が背比べをする最中、再上映の幕があがります。 ほら、彼は今日も博愛と頬に描き、こちらを見て踊ります。学習のない人です。まあ、分かりきっていたことですが。 メトロノームを抱いて心地好く眠る姿は、まるで幼稚な少年のようです。
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