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第12話 直美(7)逢瀬3―新しい発見
6月中旬の週の半ば、同窓会からもう1か月が経とうとしていた。2か月毎に会う約束だから1か月前にはそろそろ次の帰省の日程を決めなければならない時期だった。
どうしようか、こちらから予定を知らせようか、進の日程の提案を待つべきかと考えていたが、私の都合を優先できた方がよいと思った。それで昼過ぎに私からメールを入れた。
[次回は7月9日(金)10日(土)11日(日)]。
しばらくして[了解]の返信が入った。
◆ ◆ ◆
7月9日(金)実家で母と夕食を摂ってからホテルへ向かった。7時半過ぎにチェックインした。今日はゆっくりしてきた。午後4時に進から[到着は8時過ぎ]とメールが入っていた。すぐに[了解]の返信を入れておいた。
8時半過ぎになって[無事到着1240]とメールが入った。すぐに内線電話を入れる。
「お疲れ様、お元気ですか?」
「岡山に出張していて、今ちょうど着いたところです。遅れてご免」
「お食事は?」
「新幹線の中で済ませた。君は?」
「母と実家で済ませました」
「これから行くけど何号室?」
「となりの1241号室です」
「隣同士になることもあるんだ。お土産にお菓子を買ってきたから持っていこう」
「今日は私の方で飲み物とおつまみを用意しました。お待ちしています」
すぐにドアをノックする音が聞こえた。ドアを開けると微笑んだ進がいた。ドアの音がしないように注意して閉めて、すぐに中に入ってきた。私は抱きついた。抱き締めてもらうとすぐにでも愛し合いたいそんな気持ちがこみ上げてくる。
「会いたくてすぐに来てしまったけど、今日は汗をいっぱいかいたからシャワーを使わせてもらっていいか?」
「今日は暑かったから私も汗をかきました。もうシャワーを一回浴びましたので、ゆっくり使ってください。そのあと飲みもので喉を潤してください」
彼はバスルームへ入っていった。ここに二人でいれば、もう人の目も気にしなくてもよいし、誰にも邪魔されない。私は落ち着いて彼を待つことができる。徐々に気持ちが落ち着いてくる。私はテーブルにレモンサワーの缶を2本準備した。
彼は身体を拭きながら部屋に戻ってくると、テーブルのレモンサワーの缶を見つけた。
「レモンサワーが好きなの?」
「さっぱりしているので時々いただきます」
「再会を祝して乾杯」
彼はそれをゆっくり飲み干すと、手を伸ばして私を引き寄せて抱き締めてくれる。私も力一杯抱きつく。すぐに気持ちが昂る。そのままベッドで愛し合い始める。時間は十分過ぎるほどある。
◆ ◆ ◆
私は彼の腕の中で余韻を楽しみながら、静かに彼の回復を待っている。
私は何度も昇り詰めた。そのたびに大声を出しそうで必死でそれを抑えた。大声を出したら外へ漏れるリスクがある。このホテルは防音がしっかりしているので隣室や上の部屋の物音が聞こえたことはない。廊下に漏れる可能性はあるが、これは部屋の外で確かめないと分からない。
彼は耳元でささやいた。
「何も遠慮しないでしたいことをするから」
「好きなようにしていいからいろいろやってみて」
私はどんなことも当然のことのようにそれを受け入れた。そのことが彼を鼓舞してますます激しいものになっていった。
「すごくよかったわ。こんなに気持ち良かったことは初めて」
「いつもはしないことをしてみたかっただけだけど、悦んでもらえてよかった」
「まだ、お互いのことを十分に分かっていないから、恥ずかしがらずに何でも試せるのかもしれないわね」
「お互いに知りすぎていると恥ずかしくていまさらできないし、頼めないこともある」
「お互いに知り過ぎていないから、こういうふうだという思い込みがなく、抵抗なく受けいれられるのだと思います」
「確かに、まるで恋人とHをはじめたばかりのように、お互いに慣れていなくて、何でもこれが当たり前として受け入れられるのだと思う」
「慣れてくると、かえって新しいことにはチャレンジしにくくなるのかもしれませんね」
「何事も初めが肝心だとはよく聞く話だけど」
「私たちはこれからも何も遠慮しないことにしましょう。また、遠慮する間柄にはなりたくないわ」
「お互いにしたいことをする、してもらいたいことを素直に伝えることにしよう」
「毎回、新しい発見をしたいわ」
「それは結構『努力』がいるかもしれない。君も協力してくれないと」
「もちろんです。『努力』って辛いけど頑張ることでしょう。でもあなたはHが『好き』でしょう。私も『大好き』です。『努力』が大切と言われるけど『努力』と『好き』では『好き』の方が絶対に勝っていると思います。『好き』だから『努力』なしで寝食を忘れても続けられると思うの」
「寝食を忘れても続けられるは極端だけど、確かに『好き』だとできないことなどないと思う。その新しい発見をしたいという君の思いを大切にしたい」
「それを忘れないで下さい」
私は抱きついた。彼はもうすっかり回復していた。
◆ ◆ ◆
次の晩も私たちは新しい発見を求めて愛し合った。確かに四十八手も体位があることが知られている。私が知っているものはほんの一部に過ぎないと思う。
「好き」という気持ちさえあれば、新しい発見とその奥深さを無限に探究し続けることができるかもしれない。そう思った。彼もそう思っているに違いない。私たち二人にしかできないことをしてみたい。
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