第七章(R18)

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 後孔の縁をなぞりながら、宇川が旬の耳元へ口を寄せる。吐息が耳にかかりそれだけでゾクリとした。 「旬のナカに入りたい」  後孔にゆっくりと指が入っていく。浅いところをゆるゆると出し入れする度に、ちゅぷちゅぷとローションが音を立てる。その水音すら旬の興奮を煽った。もっと奥まで欲しい。自分の一番いいところを、その太い指で優しく解きほぐしてほしい。 「もっと……」 「もっと、何?」 「奥まで、挿れろよ……」  グチュリと音を立てて一層深く指が侵入してきた。指先が旬のイイ所に当たる。その瞬間反射的に指を締め付けてしまった。 「あっ、ソコ……」  ナカの僅かな膨らみを宇川は執拗に責めていく。指の腹で捏ねるようにしたかと思えば、トントンと突くように押してみたり、様々な方法を使って旬の反応を窺う。宇川にならどうされても気持ちよくて、刺激される度にあられもない声を出して悦んだ。ナカを掻き回される度に発生する快感が下腹部に集まって陰茎が再び首をもたげる。 「ひっ、うぅ……! あっ、ああっ、んぅ!」 「あっと言う間に柔らかくなったね」  指が一本から二本に増える。質量が増えても後孔は容易にそれを飲み込んだ。ナカを二本の指で擦り上げられるとより快楽は増えた。身体が勝手にピクピクと反応してしまう。  宇川の方をみると再び男根が上を向いていた。アレが欲しい。もっと深いところまで結びつきたい。 「博志……」 「何?」 「もう、挿れたい」  元々、情事において我慢が効かない自覚はあったが今日は一段と宇川がほしくて堪らなかった。宇川の指が抜かれるとすかさず身を起こした。そのまま勢いに任せて宇川を押し倒す。 「旬?」 「今日は俺が上になる」  自分ばかりが骨抜きにされて悔しかったので、挿入時くらいは自分がリードしたかった。サイドチェストの引き出しを漁ると、避妊具が用意されていた。それを引っ張り出して口を使って封を切ると、反り勃つ男根に手早く装着する。宇川も何となく旬の意図を読み取ったらしい。旬の腰を支えるように手を添える。 「ちゃんと出来るかな?」 「子供じゃねえんだから、ちゃんと出来るに決まってんだろ」  息を上げながらも宇川の男根を手に取った。それを自身の後孔に当てがう。ローションで滑って上手く挿れられなかったが、宇川が腰を支えてくれていた。 「あ、ああ……」  宇川に解されて開ききった後孔が、ズプズプと男根を飲み込んでいく。先端がイイ所をグッと圧迫した。思った以上の刺激に息が止まる。足がカタカタと震えるのを歯を食いしばって堪えた。身体に力が入るとナカを余計に締めてしまって、より宇川の形を身体で感じた。 「大丈夫?」 「平気、だし」  これ以上、奥へ入ってしまったらどうなるだろう。いつも宇川は旬の身体を気遣って、抱いてくれていた。それはとても幸せな時間だったが、旬は知っている。宇川の男根が旬のナカに完全に収まりきっていなかったことを。 (博志のこと、全部欲しい)  浅い呼吸を何度も繰り返し、どうにか呼吸を整える。そして再び腰を下ろし始めた。宇川を飲み込むほどに襲ってくる強烈な圧迫感を、息を吐いて身体の力を緩めながらやり過ごす。何度も出し入れしながら、徐々に深いところまで男根を飲み込んでいく。 「無理しないで」 「無理じゃねえ」  旬の汗がポタリとシーツに垂れた。あともう少しで宇川と完全な形で繋がることが出来る。宇川は相変わらず旬のことを心配そうに見上げていた。それが返って旬の負けず嫌いな部分を刺激する。一度腰を浮かせると勢いに任せて思い切り腰を下ろした。 「あっ……‼︎」  腹の一番奥の方を亀頭の先が思い切り圧迫する。すると目の前で閃光が弾け、下腹部を中心に快感の爆発が巻き起こった。旬の意図とは反して、足の甲から爪先にピンと力が入る。いつまでも腹の奥を圧迫され続け、甘い痺れが止まらない。そのうち酸欠のせいか浮遊感に包まれ、旬は腰を下ろしたまま動けなくなってしまっていた。 「……あまり奥の方を責めると意識飛ばしちゃうからしないでおいたのに」 「あ、う、ぁ……」 「でもここまでされたら俺も我慢できない。ごめん、少しだけ我慢して」  宇川は旬の腰をしっかりと掴むと下から腰を突き上げた。何度も何度も最奥を突かれる度に旬の陰茎は犬の尻尾のように揺れ、先走りか精液かも分からない液を撒き散らす。 「あっ! ひぃっ、んぁっ! ひ、ひろし……もう無理っ!」  嬌声の合間に必死に静止の声を上げるも、宇川には聞き入れられることなく、どんどんと追い詰められていく。身体に力が入らずに宇川に覆いかぶさる形になってなすがままにされてしまう。 「あっ、うぁっ……!」 「気持ちいい?」 「気持ち良すぎてっ、死ぬっ!」  ガツガツと突き上げられて意識はどんどんと霧がかっていく。上も下かも分からなくなるくらいに揺さぶられて、みっともないと分かっているのにだらしなく開いた口から涎が滴り落ちる。 「この体制もいいけど、やっぱりこっちの方がいいかな」  激しく突き上げられていたのが突然抜かれてしまった。ぽっかりと空いた後孔の喪失に旬は呆然としていると、仰向けに寝かせられた。足首を掴まれて大きく脚を開く体勢になる。 「この方が旬の感じてる顔が見れる」  また恥ずかしいことを、そんな文句をいうよりも先に開ききった後孔に男根がズプリと挿し込まれた。再び入り込んできた熱に旬は身を捩って悶えた。 「あっ、奥っ、やばいところ、くるっ……ああっ、もう無理、そこやだぁ……」 「さっきはあんなにお尻をキュウキュウ締めて喜んでたじゃないか」 「い、言うなぁ!」  一度知ってしまった快楽が再び襲ってくる。そう分かると身体が宇川を最奥へ受け入れようと、ナカが勝手にうねっていた。突かれてもないのに腹の奥が期待で熱くなる。 「ごめんね、終わったらちゃんと家に送る」  唇にキスを落とされた。そんなに優しいキスをされたら、何も文句が言えなくなってしまうじゃないか。旬が黙ったままでいると宇川はグッと腰を進めた。先ほどまで激しい抽送に耐えていた身体は簡単に宇川を奥まで飲み込んだ。 「うぅっ‼︎」  上に乗った時の刺激とはまた違った刺激が旬を襲う。抱きしめられたまま、ぐぅっと奥を圧迫されるとそれだけで達してしまいそうだ。宇川は何度も腰を動かし、旬の一番奥をぐっぐっと圧迫していく。熱塊の先端がゴツンと当たる度に世界が上下逆転するような感覚に襲われて、怖くなって宇川に思い切りしがみついた。 「ひろし、やばい……また、くる……」  勝手に身体が震え出す。宇川はそれをキスで宥めながら大きく腰を打ち付けた。一際深く入り込むと、旬と宇川の間で熱が放出される。 「あ、あぁ……」 「またイッちゃったね」  先ほどよりも粘度が薄い白濁が宇川と旬の腹をべっとりと濡らしていた。身体の痙攣が止まらない。それでも宇川は抽送を止めなかった。再び快楽の波が来て、旬は大きく仰反る。 「旬、ごめんね。もうそろそろイクから」  どんどんと早くなる腰の動きに宇川の限界も早いのだと悟った。自分でももう何を言っているのか分からない。ただ必死に宇川の名前を呼び続けていた。 「くっ……!」 「────っ‼︎」  スキン越しに宇川の熱い欲を感じる。旬は一際深く突かれたところで思い切り宇川を抱きしめ、全てを受け止めた。  深く愛し合った後、旬はボンヤリと天井を見つめていた。しかし、段々とラムのことが思い浮かんでくる。達したばかりでまだ重だるい身体をゆっくりと起こす。 「帰んなきゃ……」 「ゆっくりしていってほしいけど、ラムちゃんも待ってるからね。風呂、手伝う?」 「大丈夫」  宇川に案内されて浴室までヨロヨロと歩いていく。覚束ない足元を心配したのか、宇川が旬の手をとってリードしてくれた。 「じゃあ、タオルはここね。シャンプーやボディーソープ一式、ここに揃ってるから好きに使って」 「ありがと」  そう言って扉を閉めようとした宇川だったが、何かを思い出すように再び扉を開けた。 「そう言えば、さっきの返事教えてほしいな」 「さっきの返事?」 「俺とこの家に住まないか、ってやつ。鍵は受け取ってくれたけど、言葉にしてもらってないから」  確かに思い返してみればはっきりとした返事はしていない。改めて言葉にするとなると少しだけむず痒い。だが、宇川は言葉にしないと納得しないタイプだ。半年以上側にいたから何となく分かる。 「……住む。家事はツアー中は任せちまうことも多いけどそれは勘弁して」 「出来ることならなんでもするよ。どうぞよろしく」  宇川は満足そうな顔で扉を閉めた。磨りガラス越しに小さくガッツポーズを決める影が見えた。
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