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そういうわけで、舌の無いすずめちゃんはウナ先輩の居ない地元を預かるべく、解散した舞米に代わり天ノ雀を結成し、沖那君も自分の男にしたわけだ。「糊」を舐めとる舌はもう無いが、囲うことで沖那君の安全を確保したのである。沖那君は強くもないし気合がそもそも入っていない。でも顔がいい。それに優しい、良いやつだった。
なんであんな気合入ってねえ奴を、ウナ先輩もすずめちゃんも囲ってやるんだ、と陰で言うメンバーも居たが、実際近くでその顔を見ると、ぽうっとなるのであった。
「確かな筋の情報です」
ある日オタケがすずめちゃんに耳打ちをした。すずめちゃんは耳が弱いので、普通に喋れや、と思ったが黙っていた。
「ウナ先輩がもうすぐ出てくるそうです」
すずめちゃんは黙って頷いた。
それから沖那君を呼びに行かせた。
飛び出していくオタケを見て、たまり場にされている喫茶店兼バーのママは、天ノ雀集合の気配を感じてため息をついた。
奥のひとテーブルを占めているうちはまだ良いのだが、チームの人間が集まれば他の客はそそくさと退店し、そしてその日の昼営業にはもう客足を見込めない。かと言って元レディースの総長だったママとして、可愛い後輩たちの居場所を奪う気にもまたなれないのである。
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