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だがその日、飛び出して行ったオタケが連れてきたのは沖那君一人だった。
いつもはスポットライトでも浴びているかのように光っている美少年が、顔色悪く、体を縮こませて入店してくる。奥のテーブルでは、沖那君とすずめちゃんが顔を突き合わす形で何やら話し合い、オタケは存在を消すようにして端に座って控えている。
なにかがまた、街に起こる、ママは直感した。
沖那君はテーブルに手をついて、すずめちゃんに頭を下げていた。
「椅子に座ったまま下げる頭に意味なんかねーだろ!」
オタケの声が店に響いた。オタケはとにかく声が大きい。
すずめちゃんは無言で裏拳をかまして、オタケは鼻を抑えてうずくまった。
ソファから立ち上がり、床に膝をつこうとする沖那君を、すずめちゃんは子どもにするように脇を支えて立ち上がらせた。それから一言、二言、籠もった声で伝えると、オタケを連れて店を出ていった。三人分のジュース代が支払われていたので、ママは座席に残され頭を抱える沖那君に、オレンジジュースを運んでいった。
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