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いよいよウナ先輩が出てきた。
その報は街の不良たちの間に一瞬にして広まった。ウナ先輩は最恐にして最凶であるからだ。
舌を切り取られたすずめちゃんの、ごぶごぶと血を吐いてのたうつ姿をチームのメンバーは思い出していた。のたうつすずめちゃんの腹に、蹴りを入れ続けるウナ先輩の憤怒の形相をみな見ていた。天ノ雀のメンバーは、元は舞米である。
すずめちゃんの下で天ノ雀というチームを作っていることは、もうウナ先輩の耳には入っているだろう。ウナ先輩は奇襲、夜襲も問わない。
いつもの公園で集会を開いているときだったので、どうしよう、ヤバいよ、殺される、そんな言葉で広場はざわめいていった。オタケが活を入れて回る。そこに、沖那君が飛び込んできた。
「沖那オマエ、ウナ先輩のとこに頭下げに行ったんじゃねえのかよ。何しに来やがった」
凄むオタケの腹にすずめちゃんが無言で肘鉄を入れた。
「沖那『君』らろうが。ウナへんぱいの男ら」
「あ、はい、すみませんすずめちゃん……」
「沖那君、ウナへんぱいに頭さげらんらよね?」
すずめちゃんが優しく訊ねると、沖那君はシャツの袖と裾をまくりあげた。そこに残る生生しい青あざと、無傷のきれいな顔のギャップに、一同密かに唾を飲んだ。
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